会社を辞めると、それまで勤務先を通して加入していた健康保険から外れるため、次にどの医療保険へ入るかを決める必要があります。
退職後の選択肢としてよく比較されるのが、これまでの健康保険を一定期間続ける「任意継続」と、住んでいる市区町村で手続きする「国民健康保険」です。
「仕事を辞めて収入がなくなるなら国保の方が安いのでは?」「今の保険を続けた方が手続きも簡単そう」と迷うかもしれませんが、負担する金額は退職前の収入や家族構成、住んでいる地域などによって変わります。
名前だけで選ぶのではなく、自分の場合はいくらになるのかをそれぞれ確認して比べることが大切です。
この記事でわかること
- 仕事を辞めたあとに考えられる健康保険の選択肢
- 任意継続と国保で負担額の決まり方がどう違うのか
- 家族がいる場合に見ておきたいポイント
- 国保の負担が軽くなる可能性があるケース
- 退職前に確認しておきたい期限
- 実際の保険料を調べる時の問い合わせ方
退職後は健康保険を自分で選ぶことになる
会社を辞めると、それまで職場を通して加入していた健康保険は、原則として退職した翌日から使えなくなります。
その後の主な選択肢は、次の3つです。
- 退職前に入っていた健康保険を任意継続する
- 住んでいる市区町村の国民健康保険へ加入する
- 条件を満たす場合は家族が加入する健康保険の被扶養者になる
「任意継続か国保か」の2つだけを比較しがちですが、配偶者などが会社の健康保険に加入している場合は、扶養に入れる可能性もあります。
被扶養者として認められるかどうかは収入などの条件によって決まるため、該当しそうな人は家族の勤務先や加入先の健康保険へ確認してみましょう。
最初に選択肢を整理しておこう
家族の扶養に入れる可能性がある場合は、任意継続と国保だけで比較せず、扶養を含めた3つの方法で考えると分かりやすくなります。
任意継続では保険料を全額自分で負担する
会社員として働いている間の健康保険料は、勤務先と本人が分けて負担しています。
ところが退職後に任意継続へ切り替えると、会社側が負担していた分も含めて自分で支払うことになります。
協会けんぽの場合、退職時の標準報酬月額などをもとに金額が計算されるため、在職中に自分が負担していた額と比べると、支払いが増えるケースが一般的です。
目安として以前の自己負担額の倍ほどになることがありますが、保険料には上限があり、加入していた地域などの条件によっても変わるため、単純に「給与明細の金額×2」で決まるとは限りません。
退職前の給与明細だけを見て金額を決めつけず、加入していた健康保険へ実際の負担額を確認しておくと安心です。
国保は前年の所得や世帯の状況などが影響する
国民健康保険は、会社員の健康保険とは計算の仕組みが異なります。
負担額には前年の所得や加入する人数などが関係し、さらに市区町村によって計算方法や保険料率などに違いがあります。
そのため、同じくらいの収入だった人でも、住んでいる場所や世帯の状況によって支払う金額が変わる場合があります。
退職して収入が減ってもすぐ安くなるとは限らない
ここで注意したいのが、仕事を辞めた後の収入だけを見て国保の金額が決まるわけではないことです。
前年の所得が計算に使われるため、退職後に収入がほとんどなくなったとしても、前年に会社員として一定の給与を受け取っていれば、その所得が保険料へ反映されることがあります。
「無職になるから国保なら負担はかなり少ないだろう」と考えていたものの、実際に試算してみると思っていたより高かった、ということもあり得ます。
だからこそ、退職後の現在の収入だけで判断せず、市区町村で自分の保険料を確認することが重要です。
どちらが安いかは実際の金額を並べて比べる
任意継続と国保のどちらが負担を抑えられるかは、一律には決められません。
まずは、それぞれの違いを整理してみましょう。
| 比較する項目 | 任意継続 | 国保 |
|---|---|---|
| 金額に影響するもの | 退職時の標準報酬月額など | 前年所得や加入人数など |
| 家族の扱い | 条件を満たせば被扶養者として加入できる場合がある | 会社の健康保険のような扶養制度はない |
| 問い合わせ先 | 協会けんぽや加入していた健康保険組合 | 住んでいる市区町村 |
| 負担軽減 | 加入先の制度を確認 | 所得や離職理由などによって軽減・減免の対象となる場合がある |
家族がいる人は本人分だけで比べない
特に確認しておきたいのが、家族も一緒に健康保険へ加入する場合です。
任意継続では、条件を満たした家族を被扶養者として扱えることがあります。
一方、国保には会社員の健康保険にあるような扶養の仕組みがなく、加入する人の人数も負担額に関係します。
そのため、配偶者や子どもなどを扶養している人は、自分一人の保険料ではなく、世帯全体でいくら支払うことになるのかを比べると判断しやすくなります。
退職理由によっては国保の負担が軽くなることもある
国保へ切り替える場合は、通常の保険料だけでなく、利用できる軽減や減免がないかも確認してみましょう。
たとえば、倒産や解雇、雇い止めなど一定の事情で離職した人については、国民健康保険料を計算する際に給与所得を低く見積もる仕組みの対象になる場合があります。
ただし、退職した人なら誰でも利用できる制度ではありません。
雇用保険上の離職理由などによって対象になるかどうかが変わるため、離職票や雇用保険受給資格者証などを確認したうえで、市区町村の窓口へ相談するのが確実です。
また、市区町村によっては所得が大きく減った場合などに利用できる別の減免制度を設けていることもあります。
国保の試算では軽減・減免も聞いてみる
通常の保険料だけを聞くのではなく、「退職によって利用できる軽減や減免はありますか?」と一緒に確認しておくと、実際の負担額を比較しやすくなります。
任意継続を考えているなら申請期限にも注意
保険料を比較する時は、金額だけでなく手続きの期限も見ておく必要があります。
協会けんぽで任意継続を利用するには、資格を失った日の前日までに健康保険の被保険者期間が続けて2か月以上あることなどの条件があります。
さらに、資格喪失日から20日以内に申請する必要があります。
一般的な退職であれば資格喪失日は退職日の翌日となるため、退職してから長く迷っていると申請期限が近づいてしまう可能性があります。
一方、国民健康保険についても、加入することになった場合は原則として14日以内に市区町村へ届け出ます。
退職してから考え始めるより、退職日が決まった段階でおおよその金額と必要な手続きを調べておく方が余裕を持って選べます。
退職前に保険料を調べるにはどうすればいい?
任意継続と国保を比較するときに、自分で細かい計算式を調べる必要はありません。
それぞれの窓口へ問い合わせ、退職後に加入した場合の金額を確認してみましょう。
今の健康保険へ任意継続の金額を聞く
協会けんぽや健康保険組合へ問い合わせる時は、次のように伝えると分かりやすいです。
「近いうちに退職する予定で、退職後の健康保険を検討しています。任意継続した場合、毎月どのくらいの負担になるか教えていただけますか?」
家族を扶養している場合は、続けて次のように確認しておきましょう。
「現在扶養に入っている家族がいます。任意継続後も被扶養者として加入できるか、必要な条件も教えてください」
現在加入している保険が協会けんぽではなく健康保険組合の場合は、その組合へ確認してください。
市区町村で国保の見込み額を聞く
国保については、住んでいる市区町村の担当窓口へ問い合わせます。
「○月に退職予定です。退職後に国民健康保険へ加入した場合、どのくらいの負担になるか試算できますか?」
と聞いてみましょう。
その際、前年の所得が分かる書類などが必要になる場合があるため、試算に必要なものも一緒に確認しておくとスムーズです。
離職理由による軽減などが気になる場合は、
「退職理由によって利用できる保険料の軽減制度はありますか?対象になるか確認するには何が必要ですか?」
と聞いておけば、自分が対象になる可能性も確認できます。
保険料以外にも比べておきたいこと
毎月の支払い額は重要ですが、金額だけを見て決めるのではなく、次の点も整理しておきましょう。
- 任意継続の加入条件を満たしているか
- 一緒に加入する家族がいるか
- 家族の健康保険の扶養に入れる可能性があるか
- 国保で利用できる軽減や減免がないか
- それぞれの手続き期限に間に合うか
- 近いうちに再就職する予定があるか
退職後は健康保険だけでなく、年金や雇用保険など複数の手続きが重なります。
その中でも健康保険は退職直後から必要になるため、後回しにせず早めに候補を絞っておくと安心です。
迷った時はこの順番で確認してみよう
何から手を付ければいいか分からない場合は、次の順番で整理すると進めやすくなります。
- 家族の健康保険で扶養になれる可能性を確認する
- 現在の加入先へ任意継続した場合の金額を聞く
- 市区町村へ国保に加入した場合の負担額を試算してもらう
- 国保で利用できる軽減・減免がないか確認する
- 家族分も含めて毎月の負担を比較する
- 申請期限を確認して加入先を決める
「どちらが一般的に安いか」ではなく、「自分の条件なら実際にいくらになるのか」で比べるのが一番分かりやすい方法です。
まとめ
退職後の健康保険を選ぶときは、任意継続と国保のどちらかが常に有利というわけではありません。
任意継続は退職時の標準報酬月額などをもとに負担額が決まり、国保は前年所得や加入人数、居住地などが金額に影響します。
家族を扶養しているか、離職理由による軽減を利用できるかといった条件によっても比較結果は変わります。
まずは現在加入している健康保険と市区町村の両方へ問い合わせ、自分が実際に支払う金額を出してから比べてみましょう。
任意継続には申請できる期間が決められているため、退職日が分かっているなら、仕事を辞める前から確認を始めておくと手続きを進めやすくなります。
