「職業訓練に興味はあるけれど、仕事を辞めないと受けられないのかな」と迷っている人もいるのではないでしょうか。
職業訓練というと、退職後にハローワークへ行き、再就職に向けて通うイメージが強いかもしれません。
しかし現在は、パート・アルバイト・派遣などで働きながら学ぶことを想定した職業訓練も用意されています。
厚生労働省では、在職中の非正規雇用労働者などを対象とした「働きながら学びやすい職業訓練」を2024年度・2025年度に試行し、2026年度から本格的に全国展開しています。
ただし、働いている人なら誰でも利用できるというわけではありません。対象条件や申込み方法は確認が必要です。
今の仕事をすぐに辞めるつもりはなくても、「このままでいいのかな」「何かスキルを身につけたい」と感じているなら、選択肢のひとつとして知っておくとよい制度です。
この記事でわかること
- 働きながら受けられる職業訓練があるのか
- パート・アルバイト・派遣でも対象になる可能性があるのか
- 通常の離職者向け職業訓練との違い
- 受講料やeラーニングの仕組み
- 申し込む前に確認しておきたいこと
- 訓練実施機関へ問い合わせる時の聞き方
働きながら受けられる職業訓練はある
2026年度から全国展開されているのが、厚生労働省の「非正規雇用労働者等が働きながら学びやすい職業訓練」です。
従来からある離職者向けのハロートレーニングとは違い、現在仕事をしている人が、離職せずにスキルアップや職業転換を目指すことを想定しています。
仕事を辞めてから職業訓練を探すだけではなく、今の仕事を続けながら次の働き方に備える選択肢もあります。
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施するコースでは、学習は基本的にeラーニングで行われます。
受講期間内であれば24時間動画を視聴できるため、平日の仕事が終わったあとや休日など、自分の生活に合わせて進めやすい仕組みになっています。
パート・アルバイト・派遣でも対象になる?
JEEDの2026年度の案内では、受講対象者として、在職中の非正規雇用労働者が挙げられています。
具体的には、有期契約で働く人、パート、派遣労働者などが対象に含まれます。
ただし、「パートだから自動的に受講できる」という仕組みではありません。
主な条件として、次のような内容が案内されています。
- 現在、非正規雇用などで働いていること
- 正社員化や、現在とは異なる職種への転換を目指していること
- 訓練修了まで継続して受講する意思があること
- 訓練に関するアンケートなどへの協力に同意できること
正社員でも、処遇や待遇が非正規雇用労働者と同程度と認められる場合には対象になる可能性があります。
自分が対象になるか判断しにくい場合は、申し込む前に訓練実施機関へ確認しておく方が安心です。
通常の職業訓練とは何が違う?
「職業訓練」と一口にいっても、対象者や手続きは同じではありません。
| 項目 | 働きながら学びやすい職業訓練 | 一般的な離職者向け訓練など |
|---|---|---|
| 主な対象 | 在職中の非正規雇用労働者など | 主に仕事を探している人 |
| 学び方 | eラーニング中心 | 通学・eラーニングなどコースによる |
| 申込み | 訓練実施機関へ直接申し込むコースあり | 原則としてハローワークへ相談 |
| 受講料 | JEED実施分は5,000円(税込) | 離職者訓練などは原則無料、教材費等は自己負担 |
通常の離職者訓練や求職者支援訓練は、ハローワークの求職者を主な対象としており、職業相談を受けながら受講手続きを進めます。
一方、今回の制度は「仕事を続けながらキャリアアップしたい人」を想定している点が大きな違いです。
なお、都道府県が実施するコースなどでは手続きや受講方法が異なる場合があります。実際に申し込む際は、希望するコースの募集要項を確認してください。
どんなことを学べる?
2026年度にJEEDの特設サイトへ掲載されているコースには、デジタル分野を中心にさまざまな内容があります。
たとえば、次のようなコースです。
- DX事務・データ活用
- デジタル事務
- ITサポート
- ITインフラ・クラウド
- デジタル広報・オンラインPR
- ITエンジニア基礎
事務職を目指す人向けのコースでは、Office系スキルやデジタルツールなどを学び、IT系ではクラウドやプログラミングなどを扱うコースもあります。
「ITエンジニアになりたい人だけの制度」というわけではなく、事務職や営業サポートなどを目指せるコースも用意されています。
募集されるコースや期間は年度・時期によって変わるため、興味がある分野がある場合は最新のコース一覧を確認しましょう。
受講料はいくら?パソコンがなくても大丈夫?
JEEDが2026年度に実施しているコースについては、受講料は一律5,000円(税込)と案内されています。
また、パソコンやWi-Fiなどの通信機器については無料レンタルがあります。
自分のパソコンやインターネット環境を使うこともできますが、必要な性能や通信環境についてはコースごとに確認した方がよいでしょう。
資格試験を目指せるコースもありますが、資格を取得するための試験費用など、受講料以外に費用が発生する可能性もあるため、申し込む前に募集ページを確認しておくと安心です。
申込みはハローワークでするの?
JEEDが実施する「働きながら学びやすい職業訓練」では、訓練実施機関のホームページから申し込みます。
基本的な流れは次の通りです。
- 希望する訓練コースを探す
- 訓練実施機関の申込フォームから申し込む
- オンラインで選考面談を受ける
- 選考結果を確認する
- 受講料を支払う
- 受講を開始する
一般的な離職者向けハロートレーニングのように、最初にハローワークへ行って受講あっせんを受ける流れとは異なります。
ただし、都道府県が実施するコースなどは手続きが異なる場合があります。「職業訓練だから全部ハローワークで申し込む」と決めつけず、各コースの案内を見ることが大切です。
働きながら続けられるか不安な時に確認したいこと
制度として利用できても、仕事と勉強を両立できるかは別の問題です。
申し込む前に、次の点を確認しておくと状況を整理しやすくなります。
1週間にどのくらい学習時間を取れそうか
eラーニングは好きな時間に進められる反面、自分で学習時間を確保する必要があります。
仕事が終わったあと毎日勉強するのが難しいなら、「平日は30分、休日にまとめて進める」など、現実的に続けられるか考えてみましょう。
スマホだけで受講できるか
動画を見るだけならスマートフォンで対応できる場合でも、Excelやプログラミングなど実際にパソコンを操作するコースではPCが必要になることがあります。
使用する機器や推奨環境は、訓練実施機関へ確認しておきましょう。
仕事が忙しい時にサポートを受けられるか
JEED実施分では、学習の進みが遅れている人への伴走支援や、キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングも用意されています。
一人で動画を見るだけでは続くか心配な人は、どのようなサポートがあるのかもコース選びの材料になります。
申込みは1人1コースまでと案内されています。また、受講料を支払った後のキャンセルやコース変更は原則として受け付けないとされているため、内容や学習時間を確認してから申し込みましょう。
訓練実施機関へ聞く時の言い方
対象になるのか分からない時は、自分だけで判断せず、訓練実施機関へ聞いて大丈夫です。
たとえば、次のように伝えると状況を説明しやすくなります。
対象条件を確認したい時
「現在、パートで週4日勤務しています。働きながら学びやすい職業訓練への申込みを考えているのですが、受講対象に該当するか確認してもよろしいでしょうか」
勤務時間が不規則な時
「勤務時間が日によって変わるのですが、eラーニングは受講期間中であれば自分の都合のよい時間に進められますか」
パソコンを持っていない時
「自宅に受講に使えるパソコンがないのですが、レンタルの対象になりますか。受講に必要な環境も教えていただけますか」
最初から細かい事情をすべて説明する必要はありません。まず現在の雇用形態と、どのコースを希望しているかを伝えると確認しやすくなります。
受講する前に注意したいこと
働きながら学べる制度があるからといって、受講すれば必ず正社員になれる、希望する職種へ転職できるというものではありません。
職業訓練は、次の働き方に必要な知識やスキルを身につけるための選択肢のひとつです。
また、人気のあるコースは予定よりも前に募集を締め切るケースもあるため、早めの確認がおすすめです。
気になるコースがあれば、募集期間だけを見るのではなく、現在の受付状況も確認してください。
「何となく資格が欲しい」だけで選ぶより、今後どんな仕事をしたいのか、その仕事に今回の訓練がつながるのかまで考えて選ぶ方が、学んだ内容を活かしやすくなります。
今できること
働きながら職業訓練を受けたいと思ったら、いきなり申し込む必要はありません。
まずは次の順番で確認してみましょう。
- 現在の雇用形態を確認する
- 今後やってみたい仕事や身につけたいスキルを整理する
- 公式サイトで募集中のコースを見る
- 学習時間や必要なパソコン環境を確認する
- 対象条件が分からなければ訓練実施機関へ問い合わせる
- 仕事内容と訓練内容が合っているか確認してから申し込む
「今の仕事を辞めなければ何も始められない」と考える必要はありません。
仕事を続けたまま少しずつ準備し、学びながら次の選択肢を考える方法もあります。
まとめ
職業訓練には、仕事を辞めた人向けのものだけでなく、在職中の非正規雇用労働者などが働きながら受けられるものもあります。
厚生労働省の「働きながら学びやすい職業訓練」は2026年度から全国展開され、JEED実施分では、eラーニングを中心に自分の生活に合わせて学習を進められる仕組みになっています。
パート・アルバイト・派遣などで働いている人も対象になる可能性がありますが、雇用形態だけで決まるわけではありません。
対象条件、募集状況、学習時間、必要な環境を確認したうえで、自分に合うコースかを判断することが大切です。
今すぐ仕事を辞める予定がなくても、将来の働き方に不安があるなら、まずどんな訓練があるのかを見るところから始めてみてもよいでしょう。

