退職届を上司へ渡そうとしたのに、「今は受け取れない」「人手不足だから辞めてもらっては困る」と返されると、会社の許可が出るまで退職できないように感じるかもしれません。
引き継ぎや退職日の相談を求められているだけなら、話し合いで進められる場合があります。しかし、退職の意思そのものを取り合ってもらえない時は、同じ上司へ繰り返しお願いするだけでは状況が変わらないこともあります。
まずは、退職を伝えた日時、雇用契約の期間、就業規則に書かれた提出先を整理しましょう。そのうえで、必要に応じて人事や総務など別の窓口へ伝えます。
会社との関係をすぐに悪化させる必要はありません。書類を受け取ってもらえなかった事実と、退職についてどのような説明を受けたのかを分けて、順番に見ていきましょう。
この記事でわかること
- 退職届を受け取ってもらえない時に最初に整理すること
- 雇用期間や就業規則を確認する理由
- 上司以外へ退職意思を伝える方法
- メールや郵送で記録を残す時の注意点
- 会社と話が進まない場合に利用できる相談先
退職届を受け取ってもらえない時に最初に整理したいこと
退職届を拒否された直後は、「もう会社へ行きたくない」「明日から休んでもよいのでは」と考えてしまうことがあります。
ただし、書類を受け取ってもらえなかったことと、翌日から出勤しなくてよいことは別の問題です。無断欠勤と扱われる状況を避けるためにも、先に契約内容とこれまでのやり取りを整理しておきましょう。
退職を伝えた日時と相手を書き出す
まず、いつ、誰に、どのような言葉で退職を伝えたのかを書き出します。
- 退職の意思を初めて伝えた日
- 退職届を渡そうとした日
- 話した上司や担当者の名前
- 会社から言われた内容
- 希望する退職日
- 提出しようとした書類の内容
「忙しいから後にしてほしい」と言われたのか、「退職は認めない」と言われたのかによっても、その後の対応は変わります。
口頭でのやり取りしかない場合は、思い出せる範囲で日付や内容をメモに残してください。後から人事や外部窓口へ相談する時にも、状況を説明しやすくなります。
雇用契約に期間があるか確認する
次に、雇用契約書や労働条件通知書を見て、契約期間の記載を確認します。
| 契約の種類 | 確認したいこと |
|---|---|
| 期間の定めがない契約 | 退職を申し出た日、就業規則の期限、希望する退職日 |
| 期間の定めがある契約 | 契約満了日、中途退職に関する記載、更新状況 |
| 派遣社員 | 派遣元との雇用契約期間、派遣会社の担当窓口 |
期間の定めがない雇用契約については、民法第627条に雇用契約の解約を申し入れる場合の規定があります。
一方、有期契約では、契約途中の退職について個別の確認が必要になることがあります。やむを得ない事情がある場合や、一定の条件を満たす長期契約など、状況によって扱いが変わるためです。
「正社員ならいつでも辞められる」「契約社員は満了まで辞められない」と、雇用形態の名前だけで判断しないことが大切です。
就業規則の提出期限と提出先を確認する
就業規則には、「退職を希望する場合は1か月前までに申し出る」「所属長を通じて退職届を提出する」など、社内手続きが書かれていることがあります。
希望する退職日まで時間があるなら、まず就業規則に沿って進めた方が、引き継ぎや有給休暇、退職書類について相談しやすくなります。
ただし、就業規則に「上司の承認がなければ退職できない」と読める記載があったとしても、会社内の承認手続きと、労働契約が終了するかどうかは同じ問題とは限りません。
内容に疑問がある時は、会社の説明だけで決めつけず、労働局などへ確認する方法もあります。
退職願と退職届は書類名だけで判断しない
一般には、退職願は「退職させてほしい」と会社へ合意を求める文面、退職届は「退職する」と意思を伝える文面として使い分けられています。
ただし、書類の表題だけで扱いが決まるとは限りません。本文に何と書いたか、退職日をどのように伝えたか、それまでに会社とどのような話をしたかも関係します。
退職する意思が固まっているなら、書類には希望だけでなく意思が伝わるように書き、提出日と退職日が分かる状態にしておきます。
上司に拒否された後は伝える相手と方法を変える
上司が受け取らないからといって、毎日同じ相手に退職届を差し出し続ける必要はありません。
直属の上司で話が止まっている場合は、就業規則や社内組織を確認し、人事、総務、上司の上席者、会社の代表者など、別の窓口へ相談します。
人事や総務など別の窓口へ相談する
人事や総務へは、上司への不満を強く伝えるより、手続きが進んでいない事実を簡潔に伝えた方が状況を共有しやすくなります。
会社へ伝える時の例
「○月○日に直属の上司へ退職の意思を伝え、退職届を提出しようとしましたが、受け取っていただけませんでした。退職手続きを進めたいので、正式な提出先と今後の流れを確認させてください」
派遣社員の場合、雇用主は原則として派遣先ではなく派遣元です。派遣先の上司だけに伝えるのではなく、派遣会社の担当者や相談窓口へ連絡します。
パートやアルバイトで人事部がない場合は、店長の上司、エリアマネージャー、本社の従業員窓口などを確認してください。
口頭だけでなくメールでも意思を残す
口頭で何度も伝えているのに話が進まない時は、メールなど記録が残る方法でも退職意思を伝えます。
メールには、感情的な経緯を長く書くより、次の内容を入れると状況を整理しやすくなります。
- 退職する意思
- 希望する退職日
- 最初に退職を伝えた日
- 退職届を提出しようとした日
- 正式な提出先を確認したいこと
- 返信を希望する期限
送信したメールは削除せず、送信日時と宛先が分かる状態で保存しておきます。会社のメールアドレスが退職前に使えなくなる可能性もあるため、就業規則や情報管理のルールに反しない範囲で記録を整理してください。
改めて退職の意思を伝える時の言い方
強く言い返すことが苦手な人は、相手を説得しようとすると話が長くなってしまうことがあります。
退職の理由を何度も説明するより、退職する意思と、退職日や引き継ぎの相談を分けて伝える方が進めやすい場合があります。
「退職する意思は変わっていません。引き継ぎについては相談したいと考えていますので、退職届の提出先と手続きの予定を教えてください」
「人手不足であることは理解していますが、○月○日付での退職を希望しています。難しい点がある場合は、退職日と引き継ぎ方法を分けて相談させてください」
退職するかどうかを会社に判断してもらう形ではなく、退職意思を伝えたうえで、日程や引き継ぎを話し合う形にします。
引き止めと受け取り拒否を分けて考える
会社から「あと1か月だけ残れないか」「後任が決まるまで待ってほしい」と相談されること自体は、ただちに退職拒否と同じとはいえません。
自分が納得できる条件なら、退職日の調整に応じる選択もあります。ただし、後任が決まる時期が示されないまま退職日を先延ばしにすると、いつまで働くのか分からなくなることがあります。
退職日を調整する場合も、最終的に合意した日付を書面やメールで確認しておきましょう。
郵送や外部相談を考える前に確認したいこと
郵送する場合は宛先と書類の控えを残す
人事や総務にも受け取ってもらえない、会社へ直接出向くことが難しいといった場合は、退職届の郵送を検討することがあります。
郵送する前に、会社の正式名称、所在地、担当部署、受取人を確認してください。提出する退職届はコピーを取り、発送日と追跡番号も記録しておきます。
配達状況を確認できる郵送方法は、会社へ書類を送った記録を残すために役立ちます。ただし、内容証明郵便などは会社との話し合いに影響する可能性もあるため、状況が複雑な場合は、労働局や法律の専門家へ相談してから選ぶ方法もあります。
有期契約の場合は自己判断で出勤を止めない
契約社員、派遣社員、期間限定のパートなど、契約終了日が決まっている場合は、期間途中の退職について会社と認識が分かれることがあります。
契約期間が1年を超える場合や、働き始めてからの期間、退職を考えた事情などによって確認する内容も変わります。
体調、家族の介護、契約内容と実際の仕事が違うといった事情があるなら、会社へ伝えた内容や関連書類を整理し、窓口で具体的に説明してください。
注意したいこと
退職届を受け取ってもらえなかったとしても、すぐに出勤をやめると、無断欠勤や引き継ぎ不足をめぐって別の問題が生じる場合があります。会社と話が進まない時は、記録を残したうえで外部窓口へ相談しましょう。
会社と話が進まない時は総合労働相談コーナーへ相談する
退職意思を繰り返し伝えても手続きが進まない、退職日を示しても取り合ってもらえない、損害賠償をすると言われて不安になっている場合は、外部窓口へ相談する方法があります。
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、幅広い労働問題について、電話または面談による相談を受け付けています。利用は無料で、予約も原則として不要です。
平日の日中に相談しにくい場合は、厚生労働省委託の労働条件相談ほっとラインもあります。
相談窓口は、会社へ退職届を代わりに提出する場所ではありませんが、契約内容や現在の状況を説明することで、どこへ相談すればよいか、次に何を確認すればよいかを整理できます。
相談する時に用意しておきたい記録
相談する際は、次の資料があると状況を伝えやすくなります。
- 雇用契約書や労働条件通知書
- 就業規則の退職に関する部分
- 提出しようとした退職届のコピー
- 上司や人事とのメール
- 退職を伝えた日時のメモ
- 会社から受けた説明の記録
- 自分が希望している退職日
すべてがそろっていなくても相談はできます。分からない部分は分からないままにせず、「どの書類を確認すればよいか」から聞く方法もあります。
受け取りを拒否された後に今できる行動
- 退職を伝えた日時と相手をメモする
- 雇用契約書で契約期間を確認する
- 就業規則で期限と提出先を確認する
- 人事や総務など別の窓口へ書面で伝える
- 話が進まなければ労働局などへ相談する
退職届を受け取ってもらえないと、会社と争わなければ辞められないように感じるかもしれません。
しかし、最初から強い手段を選ばなくても、提出先を変える、メールで記録を残す、外部窓口へ確認するなど、段階を踏んで進めることができます。
退職をまだ切り出せていない場合は、仕事を辞めたいけど言いづらい時の伝え方も参考にしてください。
退職後の生活費が気になって動けない場合は、貯金がなくて辞められない時の考え方から先に整理する方法もあります。
まとめ|書類の拒否と退職できないことは分けて考える
退職届を受け取ってもらえなかった時は、会社の承認を待ち続ける前に、雇用契約の期間、就業規則の提出先、これまでのやり取りを確認します。
直属の上司で話が止まっているなら、人事や総務など別の窓口へ退職意思を伝え、メールや書類の控えを残してください。
有期契約や退職日をめぐって会社と認識が異なる場合は、個別事情によって扱いが変わることがあります。自己判断で出勤を止めるのではなく、総合労働相談コーナーなどで状況を説明し、次に取る方法を確認しましょう。
退職するかどうかを改めて会社に決めてもらうのではなく、退職意思と手続き上の相談を分けて伝えることが第一歩です。

